椅子ラボ

無垢テーブルの天板が突然音をたてて割れる理由

無垢のテーブルは割れます。
ただし、絶対ではないです。
なるべく割れない対策をすることは可能です。

また、木材によって割れやすい材料と割れにくい材料があります。
割れやすい無垢材の代表といえばオーク材ですね。
オーク材のナチュラルな色と木目は日本人に人気です。
しかし、しっかりと対策した天板でないと割れてくる可能性があります。

無垢材の天板が割れるのは、木材が呼吸していて、収縮するからです。
まずは、天板が割れる理由を説明する前に、無垢天板が収縮する理由をみていきしょう。

無垢天板が収縮する理由

 木材は環境の変化があると変形や収縮を起こしやすいです。
だから、木材にとっては、地産地消するのが本当は好ましいです。

しかし、家具に使われる木材は、アメリカやヨーロッパから輸入されることが多く、日本でも人気の無垢材ウォルナットやオークはアメリカ産がほとんどです。
またヨーロッパからは、ビーチ材やパイン材などが輸入されています。

しかも最近では、中国や東南アジアで家具として加工されて、日本へ入ってきます。
木材からしたら、すごい環境の変化です。
特に、中国の北部の寒い地域や、東南アジアの熱帯地域では、日本とはまったく環境が異なります。
気温や湿度が違いますので、日本に入ってきたときに環境の変化により木材が収縮するのです。
そこで、収縮の変化を少なくするために、木材は乾燥させてから家具として加工されます。
木材に含む水の量=含水率は、10~15%ほどまで落とします。それを気乾材といいます。

 たとえば、東南アジアで加工された気乾材が含水率13%で日本に入ってきたとします。
しかし、冬の日本は湿度が低く乾燥した環境です。しかも暖房器具を使うとさらに湿度が下がります。
そういった部屋に無垢天板を置くと割れることがあるのです。
僕の経験からも、無垢天板が割れるのは12月~3月の暖房を使う季節です。

気乾材の場合でも、板目板の幅方向(木目に垂直な方向)では含水率が1%変化した時に約0.2〜0.4%収縮します。

 例として、「長さ1800幅900の天板」の収縮についてみてみましょう。

含水率が1%変化して0.3%収縮するとします。
すると、含水率が1%下がると
900 ✕ 0.003 = 2.7mm
収縮します。

 それでは、乾燥した部屋で、含水率が13%→10%に下がったらどうなるでしょうか?

2.7mm ✕ 3 = 8.1mm
収縮します。

 これが天板が割れる原因になるんです。
場合によっては、1センチ近く縮むんですね。
けっこう大きな変化だと思いませんか?

天板が音をたてて割れる理由

 ですが、天板が収縮するだけなら天板が割れることはあまりないんです。
実は悪さをしているのは、天板を固定する他のパーツです。

 例えば、反り止めです。

天板は、収縮するするときに反ることもあります。
そのため無垢天板には反り止めがついています。
しかし、反り止めを正しくつけないと、反り止めのせいで天板が割れることがあります。

天板と反り止めを固定しているのはビスです。
無垢天板が収縮したいときに、ビスがガッチリ反り止めに固定してあると、無垢天板が収縮できずにビスに引っかかります。
環境変化によって、天板は8ミリ縮みたい、でもビスで固定されているから、収縮できない。
でも、収縮したい力(応力)はずっと働いています。
これは力がつり合っている状態です。物理でやりましたね。
ビスと無垢天板の力比べです。

 このつり合っている状態はいつまでも続きません。
どちらかが力比べに負けてしまいます。
そして、下記の1)もしくは2)という結果となります。

1)天板の真ん中が割れる(木材が割れる)
2)ビスが折れる

結論としては、反り止め用のビスは比較的強いので、天板(木材)が割れるケースが多いです。

天板が割れないようにする対策

そこで、反り止めをビスで取り付ける前に一工夫する必要があります。
反り止め側に加工が必要です。

 要は、天板が自由に収縮できる状態にしなければなりません。
でも、天板が反ってしまうのは困るので、反り止めが必要です。
垂直方向には動かしたくないが、水平方向は天板を自由にしてあげるんです。

 そこで、必要なのがいわゆる長穴です。
反り止めのビスを打つ部分は丸穴ではなくて、小判型の穴(長穴)に加工しておくんです。
その長穴の真ん中にビスを打つことで、天板は水平方向に収縮することができます。

 ちなみに、
「天板が反らないように接着剤を併用しよう」
というアホがいますが、これはまったくもって言語道断です。

絶対にやってはいけません。
無垢天板が割れる確率が圧倒的に高くなります。

最後に

 いかに対策を施していても、無垢天板は割れることがあります。
それは、無垢材であるがゆえの宿命です。
無垢材は使い込むことでアジがでます。
また、無垢材なら修理して甦らせることもできます。

 一方で、MDFに突板で作られたテーブルという選択肢があります。
MDFは自然に割れることはありませんが、長期間使用すると劣化して最終的には使えなくなります。
長期間の仕様を考えると高くても無垢材が良いんです。

いつも言うように、家具の購入にあたってTPPが大事です。
無垢材の天板を買う前に家具との付き合い方も考えてみてください。

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